公衆トイレ排水の再利用技術に関する調査研究

資源エネルギー部

浅野 孝幸 、 鎌田 樹志 、 佐々木 雄真

工業技術指導センター

三津橋 浩行


1.はじめに

   最近、給排水事情が悪い地域でも水洗化を可能とするため、トイレ排水を処理し

て循環再利用するシステムが北海道にも導入され普及し始めている。このようなシステ

ムが普及すれば、公衆トイレの水洗化がさらに進み、また排水による環境汚染の防止

効果も期待される。本調査研究ではその一事例を対象に約1年間、寒冷気候下での

水処理性能評価等を行った。

2.調査対象施設の概要


   今回調査を行った公衆トイレは、道東の浜中町の国道沿いに建設され、平成6年

4月から利用されている。周辺にはこうした休憩施設が少ないため、一般車をはじめ観

光バスの利用も多い。

   外観、内部とも通常の水洗化された公衆トイレと同じでが、洗浄汚水を高度処理

して再利用することで洗浄水の全量をまかなっている。

 ○調査対象施設の仕様
    
便器数 男性用/大4個、小7個  女性用/兼用6個
身障者用/兼用6個
想定利用者数 350人/日
計画平均汚水量 9.2m3/日
処理能力 10m3/日


3.排水最良処理装置の構成


     好気性微生物による酸化分解が主な処理機能で、本体での滞留時間は約10

日間、処理水の目標水質はBOD55mg0/1以下としている。っ通常の単独浄化槽と比

較すると数倍の容量を持たせている。
 
  (1)沈殿分離室

     汚水は最初、沈殿物や浮遊物などの固形物と中間水に分離され、中間水のみ
   が次の処理工程に進む。

     また嫌気条件下での有機物の分解も期待される。固形物は定期的に清掃除

   去する。

  (2)接触ばっ気槽

     プラスチック接触ろ材とカキの貝殻を接触材として充填している。ばっ気するこ

   とによって接触材に付着した好気性微生物が汚水中の有機物を酸化分解する。

  (3)活性炭吸着筒

     接触ばっ気槽での処理によって十分再利用可能な水質となるが、難分解性の

   着色物質が残るので利用者に不愉快を与えないよう活性炭を通して脱色する。

  (4)貯留槽

     活性炭で脱色された処理水は、トイレ洗浄水として貯えられ給水ポンプで送水

   される。


4.処理水質の経過


    処理装置の各槽には最初、上水を満たした状態で施設の利用を始めた。接触

ばっ気槽の接触材に微生物が十分付着するまでの間は処理効果が期待できない。こ

のトイレが利用され始めた4月の外気温は平均5℃以下で水温は10℃以下と生物処

理には厳しい条件下で装置の運転が開始された。約30日経過後にBOD59mg0/1、ア

ンモニア態窒素58gmN/1とピークに達した。しかし、この後水温も上昇して15℃となり

、処理状態が良くなって約50日経過後にはBOD51mg0/1以下となり、アンモニア態窒

素は検出されなくなった。以降、夏冬を通じて良好な処理水が得られた。


5..おわりに

    以上のように今回調査して公衆トイレの排水再利用処理装置は厳寒期において

も良好な処理水質が得られることがわかった。今後道内の公衆トイレの改修、整備の

促進に寄与するものと期待される。